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橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet), 7, p.436 - 440, 2009/04
Si(111)-41-In表面超構造は擬1次元物質として知られており、120K以下で82構造へ相転移し、金属-絶縁体転移を起こす。しかし、82構造の原子配置や相転移のメカニズムについては、未だ解明されていない。本研究では、最表面に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、相転移前後のIn/Si(111)表面からのロッキング曲線を測定し、動力学的回折理論に基づく強度計算との比較から、In原子鎖の原子変位について報告する。41構造のRHEPDロッキング曲線の結果から、X線回折実験で決定されたジグザグチェーン構造であることを確認した。また、低温相においては理論的に提案されている2つの82構造モデルを参考にして、RHEPDロッキング曲線のフィッティングを行い、最終的にヘキサゴン構造に近いモデルを得た。さらに、決定した原子位置を用いて走査トンネル顕微鏡(STM)像を第一原理的に計算したところ観察結果を再現できることがわかり、バンド構造計算からこの構造では約60meVのエネルギーギャップが現れた。以上の結果から、120Kで見られる金属-絶縁体転移は、In原子がジグザグチェーン構造からヘキサゴン構造へ原子変位することに起因していることを明らかにした。
深谷 有喜; 松田 巌*; 橋本 美絵; 成田 尚司*; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet), 7, p.432 - 435, 2009/04
Si(111)--Ag表面上に、微量のAgやAuなどの貴金属原子を吸着させると、電気伝導度の上昇を伴って、超構造が形成される。-Agと-(Ag,Au)超構造の原子配置は、これまでにさまざまな研究手法を用いて調べられており、これらの超構造はほとんど同一であると考えられる。最近、Si(111)-52-Au表面上へのAg原子の吸着によっても、超構造(-(Au,Ag))が発現することが見いだされた。この新しい超構造の原子配置は、現在のところ全く不明である。そこで本研究では、反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、この新しい超構造の解明を行った。-(Au,Ag)超構造からのRHEPDパターンの強度分布とロッキング曲線の形状は、-(Ag,Au)超構造からのものに似ていることがわかった。これらの観測結果は、新しい-(Au,Ag)超構造が他の超構造に近い原子配置をとっていることを示唆している。詳細な原子配置を決定するために、動力学的回折理論に基づく強度計算を行い、他の超構造との比較から、今回の新たな-(Au,Ag)超構造を議論する。
河裾 厚男; 前川 雅樹; 吉川 正人; 一宮 彪彦
Applied Surface Science, 244(1-4), p.149 - 152, 2005/05
被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Chemistry, Physical)RHEPD全反射強度解析法を用いて、熱処理により形成される6H SiC(0001)表面の超構造を研究した。その結果、高温水素エッチングにより平坦化処理した6H SiC(0001)表面には、酸素吸着が存在することがわかった。これは900-1000Cの熱処理により脱離させることができ、それに伴い、RHEPDロッキング曲線の全反射領域に特徴的な吸収ピークが発現することが見いだされた。この熱処理では表面にSiアドアトムに付随する超構造が形成されることが報告されており、実際上の吸収ピークがこのモデルで説明できることが明らかになった。アドアトムと第一層の結合距離は約1.8であり、LEEDによる結果とほぼ一致している。また、1000C以上の長時間熱処理により、表面炭化が進行し、これに伴い陽電子回折ロッキング曲線も劇的に変化することが明らかになった。得られたロッキング曲線は、表面にグラファイト単層が存在するとしてよく再現できること、及びグラファイト単層とSiC第一層の結合距離が約3.3となり、グラファイト単層がファンデルワールス力により結合していることがわかった。従来この表面の構造としては、グラファイト層モデルとアドアトムによる再構成モデルが提案されていたが、RHEPDの結果は前者が有力であることを示している。
深谷 有喜; 河裾 厚男; 林 和彦; 一宮 彪彦
Applied Surface Science, 244(1-4), p.166 - 169, 2005/05
被引用回数:5 パーセンタイル:26.1(Chemistry, Physical)Si(111)--Ag表面は、最表面の銀原子が三角形に配置したhoneycomb chained triangle(HCT)構造が提案されていたが、最近、理論計算と低温STM観察により、銀の三角形が非対称なinequivalent triangle (IET)構造が基底構造であることがわかった。そのため、室温における表面構造が現在新たな議論の的になっている。この表面の構造決定においては、最表面に位置する銀原子の配置を正確に決定することが重要である。そこで、本研究では最表面構造に非常に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、表面構造解析を行った。実験は、相転移温度150K前後の140Kと室温で、Si(111)--Ag表面からのRHEPD強度の視射角依存性(ロッキング曲線)の測定を行った。特徴として、室温に上昇すると、全反射領域に見られるピークの位置が、高角側にシフトすることがわかった。第一原理計算によって決定されているHCT構造とIET構造の原子配置を用いて、動力学的回折理論に基づく強度計算を行ったところ、HCT構造からの全反射領域のピークは、IET構造に比べて高角側に位置することがわかった。以上の結果から、現在、Si(111)--Ag表面は、150K付近で秩序・無秩序相転移を起こすのではなく、構造変化を伴う秩序・秩序相転移を起こすと考えている。
Chen, Z. Q.; 山本 春也; 河裾 厚男; Xu, Y. H.; 関口 隆史*
Applied Surface Science, 244(1-4), p.377 - 380, 2005/05
被引用回数:16 パーセンタイル:55.73(Chemistry, Physical)酸化アルミ及び酸化亜鉛単結晶基板を用いて、パルスレーザー沈殿法により、ホモ及びヘテロエピタキシャル酸化亜鉛薄膜を作製した。原子間力顕微鏡により観測された表面ラフネスは基板材料に依存していることがわかった。すなわち、ヘテロエピ膜の表面ラフネスの方が、極めて大きいことがわかった。陽電子消滅の結果は、ホモエピ膜の方がより高濃度に結晶欠陥を含むことを示した。ラマン散乱測定は閃亜鉛構造に由来する437cmのピークを示した。いずれの膜も非常に強い紫外発光を示し、それらが優れた光学特性を持つことが明らかになった。
林 和彦; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Applied Surface Science, 244(1-4), p.145 - 148, 2005/05
被引用回数:4 パーセンタイル:21.64(Chemistry, Physical)反射高速陽電子回折(RHEPD)では全反射が観察される。全反射領域では、陽電子の物質への進入深さが浅いため、回折された陽電子は表面の情報のみを持つ。RHEPDを用いることで、最表面原子位置や表面デバイ温度を正確に決定することが可能となる。本研究では、RHEPDのこのような特徴を生かし、Si(001)清浄表面の構造を調べる。Si(001)表面は200K以下で、21構造からc(42)構造に相変化することが知られている。そこで、RHEPDパターン強度分布を相転移温度前後で比較した。室温において、全反射回折の起こる条件でパターンを観測した結果、(0,0), (-1/2,0), (-1,0), (-3/2,0), (-2,0)スポットを確認した。試料を150K以下に冷却すると、(0,0)スポットの強度は強くなり、(-1/2,0), (-1,0), (-3/2,0), (-2,0)スポットの強度は弱くなった。これは、表面構造が21からc(42)に変化したためであると考えられる。原子構造を決定するために、室温と150Kにおいて鏡面反射スポットの視射角依存性を測定した。現在、動力学的回折理論に基づいた計算を行い、原子位置の決定を行っている。
前川 雅樹; 河裾 厚男; Chen, Z. Q.; 吉川 正人; 鈴木 良一*; 大平 俊行*
Applied Surface Science, 244(1-4), p.322 - 325, 2005/05
被引用回数:13 パーセンタイル:49.91(Chemistry, Physical)熱酸化過程においてSiO/SiC界面に残留する構造欠陥を評価するため、低速陽電子ビームを用いSiO/SiC構造における界面欠陥の検出とその評価を試みた。陽電子消滅寿命測定より、界面の構造はSiCよりも空隙が多くSiOに近い構造であると考えられる。ドップラー幅拡がり測定からは、界面領域においてWパラメータの増大が見られ、これは酸素価電子との消滅に由来することが示唆された。また酸化後にアルゴン雰囲気中でアニール処理を行うと、界面領域におけるWパラメータの減少が見られた。これは酸素価電子の影響が減少したことによると思われる。以上より、SiO/SiC界面には酸素ダングリングボンドを含む不完全酸化物が堆積しており、アニール処理を行うとこれが消失し界面構造の向上が図られるものと考えられる。
村上 博成*; 朝岡 秀人; 堺 一男*; 伊藤 利道*; 斗内 政吉*
Applied Surface Science, 175-176, p.306 - 311, 2001/05
被引用回数:7 パーセンタイル:41.34(Chemistry, Physical)包晶反応を利用して作製した高品質なYBaCuO単結晶を用いて、超伝導発現機構を知るうえで重要な、状態密度変化を走査トンネル分光法で観測した。これまでYBaCuO単結晶の原子レベルでの完全性や、最表面処理の問題から測定が困難であった。われわれはSTM装置中の超高真空下、極低温下においてYBaCuOの表面劣化層を取り除き、原子レベルでフラットな最表面を作製した。B系酸化物超伝導結晶で得られた状態密度変化と似かよった結果を得ている。
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
Si(111)--Ag表面上に、微量の貴金属原子を吸着させると、超構造が形成する。この超構造は、吸着前の表面に比べ、非常に高い電気伝導度を持っていることが知られている。これまでにさまざまな研究手法を用いてこれらの超構造の解明が試みられたが、まだ統一的な見解には至っていない。そこで本研究では、反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、貴金属原子であるAgとAuを余剰に吸着させたときに形成される-Agと-(Ag, Au)超構造の解明を行った。両者の表面からのパターンを測定したところ、各スポットの強度分布は非常に似通ったものであることがわかった。動力学的回折理論に基づくロッキング曲線の解析から、Ag, Auいずれの余剰原子は、下地の-Ag層から約0.5と非常に低い高さに吸着していることが初めてわかった。また、パターン解析から面内の余剰原子の吸着サイトを決定したところ、3つの余剰原子が正三角形を形成し、単位格子の角に配置している構造モデルが実験結果をよく説明できることがわかった。以上の結果から、Ag, Auいずれの貴金属原子によって誘起される超構造は、同一の原子配置を持っていると考えられる。
岡田 美智雄*; Vattuone, L.*; Rocca, M.*; 寺岡 有殿
no journal, ,
Steps are known to be often the active sites for the dissociation of O molecules since they provide paths for subsurface migration and oxygen incorporation. In order to unravel the effect of their morphology on the oxidation of Cu surfaces we present a detailed investigation of the O interaction with Cu(511) and compare it with the results for Cu(410). As for Cu(410) we find that CuO formation gradually starts above half a monolayer oxygen coverage and that the ignition of oxidation can be lowered to room temperature by dosing O via a supersonic molecular beam at hyperthermal energy. The oxidation rate for Cu(511) comes out to be lower than for Cu(410) at normal incidence, about the same when the O molecules impinge towards the ascending step rise, but higher when they hit the surface along trajectories even slightly inclined towards the descending step rise. These findings can be rationalized by a collision induced absorption mechanism.